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2009年01月02日

護守一十シリーズ
 小説「護守一十達」 其の四 「 三人とあいふぉん」




其の四 「 三人とあいふぉん」

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「う〜〜〜寒い」

昌人は冬の寒さに震えながら制服に着替えていた。
公立中学の制服はありきたりの学ランだが成長期の昌人にはそろそろ
交換が必要らしく、少し裾が短くそこから吹き込む風の冷たさが苦手なのだった。


「ま〜さ〜と〜学校行こう〜」
元気な声で昌人を呼ぶ声がした。
幼なじみの紗南だ。

「今行くよ」
そう返事しながら慌ただしく玄関へ向かう昌人。
ふと、庭へ目をやると見慣れない三人組が居るのに気がついた。
「お客さんかな?」

まだ昌人はこの三人が護守一十であり、いずれ自分もその運命に巻き込まれる事に
気がつかずに居た。






「ね、美夜子さん。これからどうします?」
庭の池に放された鯉に餌をやりながら小吉が尋ねる。

「そうだな、やみくもに探しまわっても効率が悪い。
昌臣様もいろいろ調べて下さっているからそれを待つのも大事だけど・・・」
「美夜子さん?」
考え込む美夜子。



「あ〜〜〜〜アネゴ、すまねぇ寝坊しちまったぁ〜〜〜!」
騒々しく走り込んで来たのは二郎だ。
どうやら昨日は昌臣から出された泡盛を飲みまくって酔いつぶれてしまったらしい。

「いやぁすっかり飲み過ぎちまってよぉ。
まぁだ頭がクラックラすんだよなこれが」


「ったく・・・」
能天気な二郎の様子にため息混じりの美夜子。
「二郎さんらしいなぁ」苦笑する小吉。




「なかなか面白いやつらが来たものよ・・・・」
笑みを浮かべながら庭の三人を眺める昌臣。
この状況にあってあの様子、なかなかの肝の据わり様である。
護守一十の状況は決して良いものではなかった。
あの夜、3人の話しを聞いた直後昌臣は事の次第を御門へ報告していた。





「御門、昌臣でございます。
この様な夜分に失礼致します。」

「まったくじゃ。
で、何用か」

「はい、実は奥州藤原の・・・・」

「里が滅びたのじゃろう・・・・」

「ご存知で・・・・?」

「無論じゃ。
もっとも事の詳細はまだつかめておらぬ。
人をやって調べさせてはおるのじゃがな」

「さようでございましたか。
実は私の所に生残りが3人身を寄せております。」

「なに、生き残ったものがおったのか?」

「はい、ですが彼等は事が起きた時京都におりその場には居合わせなかったようです。」

「そうか、では滅びた時のことは何も知らぬのじゃな」

「はい・・・・。
ですが、彼等は里を滅ぼした者を追ってこの地へやってきたと申しておりました。
今はまだ見つけきれてはおりませぬが・・・。
そしてその内の一人は奥州藤原の宗主・鎌人の遺思を感じ取ったそうでございます。」

「鎌人の?で、なんと?」

「ただ一言、 『 怨御門 』 、と。」




「!・・・・・・・・・・・」





「なるほどのう。
やはりあやつか・・・・・。
これではっきりしたわけじゃ・・・・。
里が滅ぼされるわけじゃ・・・・・。

しかし生残りが居ただけでも重畳。
仲間を滅ぼせし奴らを逃すわけにはいかぬ。
昌臣よ、いずれ人をやる。
それまで彼等に力をかしてやるがよい。」


「は、御門。」
昌臣は深々と頭を下げた。
それを見届けたかのように御門の姿は闇にとけていった。








「美夜子殿、二郎殿、小吉殿」
昌臣に声をかけられた三人がはっとしてこっらを向く。

「以外と早起きじゃな三人とも。」

「いえ、一刻も早くやつらを見つけねばなりませぬ故。」
思いつめたように応える美夜子の表情に険しいものを見た昌臣は三人を食事に誘った。

「そう急ぐでない。朝食を用意してある。
ゆっくり腹ごしらえをしてからでもよかろう」

「やっりぃ、丁度腹へってたんだよな俺。」
「じ、実は僕もちょっとだけ・・・」
「ったくお前達は・・・・・私らは居候の身で、しかも今はそんな暇は・・・」


グゥ・・・



思いがけず腹が代わりに言葉を続けたので顔を真っ赤にして硬直する美夜子。

「あっれぇ、アネゴ、じゃない美夜子さんなんかき〜こえたぜぇ〜?」
ニヤニヤしながらからかう二郎。
「二郎、てんめぇ〜〜〜〜」
顔を真っ赤にしながら二郎を追いかけ回す美夜子。

「やれやれ・・・」
先に行くかと小吉を促す昌臣。

「二人とも、頼むから庭だけは壊さんでくれよ」
「美夜子さん、二郎さん、先に行きますね」

は、と我に返り慌てて二人の後をおう美夜子と二郎。



廊下を渡っていく途中、道場から気合いの入った声が響いて来る。
「あれは?」
「ああ、あれは通いの道場生じゃよ。
護守一十は役目であってそれだけで食っていけるわけでもないのでな。
わしはこの道場で武術を教えておる。
もっとも最近はOLや主婦に護身術を教える事の方が多いがな。」
昌臣の説明に三人はふーん、っと納得しながら道場を見ながら歩いていく。




護守一十は基本的に政治とは別である。
この国が、国としてまとまるよりはるか以前より存在はしてきた。
しかし政治と交わる事による様々な弊害から、距離を置き
人目をしのんで存在してきた。


邪鬼といい鬼人といいそうそう頻繁に出て来るわけでも無く、その存在自体ほとんど知られていない護守一十に
多額の資金をもって後ろ盾となる様な人間はほとんどいない。
いや、まったく居ないわけではないがそれだけで一族全員を食わせ、かつお役目を果たすだけの力を温存し続けるのは
厳しいのである。

ひとまずお役目を果たす為のある程度の環境は御門から与えられはするが
昔の様に人里離れて暮らせば誰にも知られずという時代でもない。
むしろ進んで人の中に入る事で当たり前に暮らす方が自然にとけ込める。
「木」は「森」の中に、である。
その為には生活するだけの稼ぎが無くてはならなかった。
そこで昌臣が始めたのがこの道場である。
昨今物騒な時代になった為か、そこそこ繁盛しており地元の警察にも指南役も務めている。



廊下を渡りきり、4人は別の棟の部屋で食事をとった。

大盛りでおかわりをくりかえし、満腹になった腹をなでながら横になる二郎。
その横でまだ一生懸命に食べ続けている小吉。
姿勢を崩さずお茶を口にする美夜子。

「して、これから先どうしていくつもりじゃ?」
三人を見ながら昌臣が真面目な顔をして尋ねた。
これまで見た事もない険しい表情の昌臣。


「・・・・・まだ決めておりません。
ひとまずこの街を回ってやつらが潜んでいそうな場所を探すつもりです。」
真面目な顔をして昌臣に答える美夜子。
「そして、必ずこの手で・・・」
唇を噛みしめるその表情には固い意思が伝わる。


「美夜子殿、そう慌てるでない。
わしの方もいろいろ動いておる。
この街は見ての通りそうそう大きいわけでもないが3人だけで探し尽くせる程小さいわけでもない。
ましてや地の理も得ておらぬのではどうしようもあるまい。
何か情報が入れば教える。
じゃから焦らずゆっくりしておれ。」


やんわりと美夜子を諭す様に言葉を続ける昌臣だが美夜子はどうしても抑えきれないものがあるようだ。

「お気遣い、ありがとうございます。
ご協力はうれしく思いますしお言葉には甘えたいと存じます。
ですが全てを任せたままにして我らだけがのうのうと過ごしているわけにはいきませぬ。
我らは我らで調べてまいります。」


どうやら言っても聞かぬようだと悟った昌臣はやれやれ、と頭をかきながら奥の部屋へ入り、中から何か出して来た。

「3人ともこれを持っていくがよい。
地図ではかさばるしお互いに連絡をとるのもらくじゃろう。
なに、こんな街でもけっこうしっかりと電波はとれるようでな。
ワシのお気に入りじゃ。」


そう言いながら正臣が人になにやら手渡す。


「おっほ、iPhone3Gじゃねぇかじいさん!けっこうハイカラじゃねぇの。」
「あ、あいふぉん?なんだそれは?」
うれしそうな声をあげる二郎に聞き慣れない言葉に戸惑う美夜子。

「これはAPPLEっていう会社が出してる携帯ですよ。
ほら、こうやって画面を触って使うんです」
小吉が目の前で操作してみせる。

画面に青い円が映され大きな地図が出る。
しばらくユラユラと揺れたかと思うとググっと小さくなり
近隣の地図が表示され、現在地に青い点がつく。
小吉がその点を中心に親指と人差し指を広げる様にすると、それにあわせてググっと地図が大きくなり
より詳細な地図が表示された。

「ほら、ここがこの辺の地図でぼくらはここです」


「しょ、小吉なんでお前そんなに詳しいんだ・・・・・・・・・」

楽しそうに操作する二人の意外な一面を見せつけられ、ちょっと焦りを感じる美夜子であった。












posted by たいじゅ@音森の館 at 17:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 護守一十シリーズ 小説「護守一十達」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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